20210731.吉田有紀展-YUKI YOSHIDA-『おもちゃカラー』

ギャラリー6坪、2021年7月8月の企画展をご案内いたします。

吉田有紀展
『おもちゃカラー』
抽象色彩のコンピレーション

YUKI YOSHIDA EXHIBITION
2021.7.31(土)-8.8(日)
am.11:00-pm.6:00(土曜日はpm.8:00迄 最終日は5:00pm迄)
※7/31(土)作家在廊予定


おもちゃカラーについて

 おもちゃカラーの語源は、ガンダム原作の富野由悠季氏がお台場に設置された、等身大ガンダムの落成式の式典で、3分間のスピーチで8回使った言葉です。

 ガンダム制作当時、ガンダムの色彩について、戦争の兵器なので単色の白やグレーにしたかったところを玩具メーカーからの圧力でトリコロールに変えられたことがエピソードとしてあり、当時はその色に不満を持っていたようです。しかしながら、子供が最初に出会う玩具として、この色使いは平和なハッピーカラーとなりうると考えを改めたとコメントしています。

 その式典のスピーチにて、連呼されるおもちゃカラーという響きがとても印象的で、その響きの中に、当時の納得できない憤りと、アニメ産業というマーケティング至上の致し方なさの含みを感じました。

 このスピーチにおいては肯定されてはいますが、おもちゃという軽さに、作品に対するリスペクトのなさに対して、子供や視聴者を馬鹿にしたような、このデザインにしておけば良いんだというような、嘲弄した玩具メーカーに対してのある反骨的意思の表れが“おもちゃカラー”という名称に自分は感じました。

 美術においても、美というのはこういうものだと既成概念を押し付けられながら、表現をする作家の裏腹な気持ちに非常に似通っており、同じような気持ちになることは多々あります。しかしながら、作る側も新しいことや見たことの無いものを納得させるだけの作品の持つ強度を上げていく必要はあります。

お台場ガンダム・オープニングセレモニー【富野監督の言葉】


マックス塗り

 ガンダムプラモデルの大ブームにおいて、模型業界は大きな変換期を迎えます。模型というのは、戦車や戦闘機、車やバイクなど存在するものをミニチュア化し、それがいかに精巧に再現できるかというものが、主流だったのですが、ガンプラブーム以降、この世に無いものを如何にリアルに存在させるかというテーマに大きく変化しました。そのため、それまでの模型技法は様々見直され、20m以上の人型兵器が宇宙でどうダメージを受けるか?湿地帯でどう汚れるかなど、仮想領域が多く介入してきたわけです。

 そこで、塗装方法にも斬新で新しい技法が多々生まれました。その中においても特に一世を風靡したのがマックス渡辺氏が開発したマックス塗りで、それまで下地には発色を良くするための明るい無彩色(白、グレーなど)が普通であったところ、仕上がる色が明るい色であっても、いったん真っ黒に塗った後に、パーツの面の部分を固有色でグラデーション塗装をしていき、パーツの角、先端などを暗く残すという、逆転的発想の塗り方の発明でした。

 角部分が強調され面部分が張り出して見えてくる仕上がりは、小さな模型を大きく見せる効果を倍増し、また色彩も下地の暗さで若干鈍くなるため、アニメ的な発色というよりも、実在する金属的な質感が重厚な表現の助けとなります。2000年代くらいまでは、このグラデーション塗装が主流となっていたと記憶します。

 今回出品の“おもちゃカラーG”と“おもちゃカラーS”、“おもちゃカラーD”は初回の下地色を同系色系統の低明度な色にするなどのアレンジをしていますが基本的にはマックス塗りを踏襲した技法で制作しております。

 実際に無いガンダムやザクがマックス塗りにおいてリアリティを持つのであれば、自分の抽象形態である六角形や五角形のピースも、同様に存在しないものなのにリアリティがあるという存在感を出せるのでは無いか?と考えました。

 色彩はそれ単体では意味を持ちませんが、意味のあるテーマを作品の中に仕込むことで、それを知っている人からすると、そこに意味が発生します。今回出品した“おもちゃカラーG”はガンダム、“おもちゃカラーZ”はザク、“おもちゃカラーU”はユニコーンガンダム、“おもちゃカラーS”はシナンジュ、“おもちゃカラーD”は黒い三連星のドムと、ガンダムを知っている人ならば、これはあれかと連想しうるわけですが、全く知らない人には、赤べこを連想したり、車を連想したりするというコメントを貰ったりもします。

 

 おもちゃカラーとマックス塗りを通して、意味を探すことよりも、自分なりの価値づけをしていいと言うことが理想であって、色は思念の伝達をするツールであるということを作品に込めました。

 日本の美術は解説的で理解に至るまでの、まるで推理小説を読み解くようなものが多く、見る側の感覚や意見が介入しにくいものが多いです。わかるわからないをジャッジするのではなく、感覚的な波長が合うか合わないかで見られるように、作る側も見る側も成長していくことを願っております。


篭の中で踊る

このシリーズは昨年コロナウィルスが流行るに連れ、表現の場が奪われていきました。そんな中、ミュージシャンやダンサーがインターネットを介して配信ライブを行ったり、ズームでファン交流などをして、今までとは違う表現方法を模索していたのが印象的でした。

 この作品のテーマも、砂漠のような場所で檻に入れられても踊りを踊るダンサーというモチーフで描きました。版画、とグラインダーで削り出すというモノタイプ的制作技法は、新しい試みです。

 造形表現をする作家も展覧会が中止や延期になり、開催してもオープニングパーティーなどができずに、展示はしても人を呼べないという状況が続いています。今後もしばらく続きそうなこの状況下で、如何に新しい繋がりの作り方をしていけるかは、テーマの一つになっていくと思います。

吉田 有紀

 

YUKI YOSHIDA Profile

1971年神奈川県鎌倉市生まれ
1997年多摩美術大学大学院美術専攻科修了

画歴

2021年
桜を見る会 (東京 eitoeiko)
META  (神奈川県民ホールギャラリー)
個展 Somewhere the Sun is Shining (京都bonon kyoto) 

2020年
個展 Look for the Silver Lining (東京 eitoeiko)
個展 カオスとコスモス (神奈川 フェイアートミュージアムヨコハマ)
個展 空間との対話 (神奈川 鎌倉ドローイングギャラリー)

2019年
META 日本画のワイルドカード (神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)

2016年
META real (神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)
横浜プライマリーアート展 (神奈川 Fei Art Museum Yokohama)

2015年
ART OSAKA 2015(大阪 梅田グランヴィア大阪)
個展(東京eitoeiko)

2014年
高島屋幻想博物館展(東京 日本橋高島屋 他)

2013年 
個展(東京 eitoeiko)ニューシティ・アートフェア(hpgrp gallery ニューヨーク)
Imago Mundi (Fondazione Querini Stampalia ベネチア)

2012年
ニューシティ・アートフェア(hpgrp gallery ニューヨーク)
ULTRA005(東京 スパイラルホール)

2011年
Gateway Japan(トーランス市美術館 カリフォルニア州トーランス)
METAⅡ展 震災復興支援展 (東京 アーツ千代田3331)
ULTRA004(東京 スパイラル) META II 2011(神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)

2010年 
METAⅡ展(神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)
個展(神奈川 カスヤの森現代美術館)
個展(東京 eitoeiko)
META X展 2010(東京 日本橋高島屋アートギャラリーX)
美の潮流 五島記念文化財団20周年記念展(東京 Bunkamuraザ・ミュージアム)

2009年 
101アートフェア (.東京 秋葉原UDX)
個展(神奈川 ギャラリーヒラワタ)
META X 2009(東京 日本橋高島屋アートギャラリーX)
METAⅡ ‐日本画大冒険‐(群馬 高崎タワーミュージアム)
アジアトップギャラリーアートフェア(ソウル)
ダイナミズムの源流HEVY METAⅡ(山形 東北芸術工科大学ギャラリー)
個展(新潟 ギャラリー6坪)グループ展 (東京 eitoeiko)

2008年
個展(東京 ギャラリープラスワン)
個展 (神奈川 ギャラリージャックと豆の木)

2007年 
個展(神奈川 ギャラリーヒラワタ)
METAⅡ展(神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)
個展(新潟 ギャラリー6坪)

2006年 
MOTアニュアル No Border –日本画から日本画へ‐(東京 東京都現代美術館)
個展 -Groove-(東京 アートフロントギャラリー)

2005年 
METAⅡ展(神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)

2003年 
グループ展「ART@KI塾」「ezo180展」新潟県十日町
個展 「日本画のありよう vol.1」(東京 Gallery Restaurant & Bar ZODIAC)
日韓国際現代美術展 (神奈川 神奈川県民ホールギャラリー)
個展(神奈川 ギャラリーHirawata)

2002年
個展(東京 ギャラリーセンターポイント)
4th Contemporary Young Painters Exhibition (バングラディッシュ)
グループ展「02-03展」(神奈川 ギャラリーヒラワタ)
第2回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展 入選

2001年 
Wirks Worth Festival (イギリスダービー州)
グループ展「01-02展」(神奈川 ギャラリーヒラワタ)

2000年
メチエの未知へ (東京 東京銀座画廊)
第11回五島記念文化財団 新人賞受賞 (研修先ロンドン)

1999年
グループ展「第3回栴檀会」(東京 ギャラリー毛利)

1998年 
個展(東京 渋谷エッグギャラリー)
メチエの未知へ (東京 0美術館)昭和シェル現代美術賞

1997年
個展(東京 原宿ギャラリー)
1997絵画出発 (東京 麻生工芸館)
第8回関口芸術基金賞 優秀賞受賞(建畠哲:選) 

1996年 
2人展 大純情展(東京 渋谷エッグギャラリー)
フィリップ・モリスアートアワード1996最終審査展
第7回柏市文化フォーラム104大賞展-TAMON賞- 入選

コレクション
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